余命

がんと闘い生を勝ち取るか、子供を産み命を託すか。余命を決めるのは自分-。妊娠と同時にがんが再発した女性医師の下した壮絶な決断とは。命あるものすべてを抱きしめたくなる感動長篇。


と、まぁこんな感じの紹介文に「今までの谷村作品とは違うイメージだな」(勝手なイメージだが・・・)と思い図書館で借りた一冊。


外科医である滴が、医者をあきらめた夫との間に結婚10年目にして授かった小さな命。喜びもつかの間、若き日に患った乳がんの再発が発覚。そのとき滴が決断した行動。
あまりにも過酷なその決断に、尊敬と驚きをもって読み進めた。途中で止められず、2時間ほどで最後まで読みきった。涙、なみだ。
単なるお涙頂戴的な闘病物ではなく、女性として、妻として、母として、そして人間としてどう生きるかが根底にしっかり根付いた小説だ。

私は、癌を患ったこともなければ、子を持ったこともない。
だからなのか、この淡々とした話の展開がよかった。
もし、主人公の心情が深く書かれていたら、こんなにすんなり読めなかったかもしれない。

後半で
「どうして、俺にも言えなかった?」
「産ませてくれないって思った。あなた、私のことすごく好きだから」
という夫婦の会話がある。
結婚して十年もたって、こんな言葉が言えるような夫婦になりたいと思った。